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若いうちに要チェック! 生命保険が相続税対策になる仕組み

あなたの両親は大丈夫?

注目度アップ! 生命保険を活用した相続税対策

2015年1月以降、相続税対策への関心が一気に高まっています。理由は、相続税の基礎控除額や税率等が変更され、今まで税金を払わなくてよかった人たちも相続税の納付対象になる可能性が出てきたからです。

相続税がかかりそうな場合は、財産の内訳を出して早めに対策を講じておかなければなりません。方法としては、贈与を活用したり、土地の評価を下げたりすることがありますが、「争族対策」にも有効な点で、生命保険の活用に大変注目が集まっています。

生命保険で相続対策をするメリット

相続税対策に生命保険を活用したときのメリットは大きく分けて3つあります。

  • 生命保険の非課税枠を活用して相続税を節税できる
  • 相続税の納付金準備が出来る
  • 渡したい人に確実にお金を残せる

その他に、相続が発生すると、預貯金等の口座は通常凍結され、現金の引き出しが出来なくなってしまいますが、死亡保険金を受け取れば、現金の支出に対しても心配しなくてすむ、という効果もあります。

生命保険で相続税が節約できる仕組みについて

なぜ生命保険に加入すると相続税を節税できるのでしょうか。

生命保険, 相続税 (写真=Thinkstock/GettyImages)

もし、相続財産が1500万円の預金であれば、税金を計算するもととなる金額(相続評価額)はそのまま1500万円ですが、生命保険を活用すれば「死亡保険金の相続税非課税限度額」という非課税枠が利用できるからです。

具体的には、生命保険金のうち、「500万円×法定相続人の数」の金額までが非課税となります。

たとえば法定相続人が3人の場合、非課税額は1500万円になります。1500万円の預貯金を使って生命保険に加入すれば、預貯金の1500万円を非課税枠を使って減らすことが出来るのです。

これからはもっとお得になる可能性もある!

また、注目すべき点として金融庁が出している2015年度税制改正要望事項があります。「死亡保険金の非課税限度額の引き上げ」についてですが、現行限度額に「配偶者分500万円+未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算する、とあります。

まだ要望段階ですが実現した場合、法定相続人が妻と未成年の子供2人だと、現行1500万円に加えて、さらに1500万円、合計3000万円の相続財産を減らすことが出来るのです。

タンス預金やしばらく使わない預金を持っている方は、生命保険に加入して、早くから節税対策を始めることをお勧めします

生命保険を活用したらどのくらいの節税効果がある?

下記事例を参考に生命保険を使った場合と使わなかった場合を比べてみましょう。

<事例:Aさんの場合>

家族:妻・長男・長女

現金・預金・株式:6000万円

土地(特例適用後):2600万円

建物:1200万円

葬儀費用:300万円

Aさんが生命保険に加入せず、亡くなったケース

財産を合計すると、総遺産額は9800万円。葬儀費用300万円を引いた正味の遺産総額は9500万円となります。

こちらの遺産総額から基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の人数)を引くと、

9500万円−4800万円=4700万円

となり、結果として4700万円が相続税の課税対象です。

妻、長男、長女がそれぞれ法定相続分を相続すると、相続税の金額は、

  • 妻:0円(法定相続分 1/2)
  • 長男:126.25万円(法定相続分 1/4)
  • 長女:126.25万円(法定相続分 1/4)

となります。(配偶者は法定相続分に対する税額控除があります)

相続税の詳しい計算方法は国税庁のホームページを参考にしてみてください。

Aさんが生命保険に加入していたケース

では、Aさんがもし生命保険(掛け金、保険金いずれも3000万円)に加入していたらどうなるでしょうか。

まず、Aさんの財産「現金・預金・株式」は、生命保険の掛け金3000万円が差し引かれて、3000万円になります。

さらに、Aさんが亡くなった時、保険金として、家族は3000万円を受け取りますが、非課税枠(500万円×法定相続人の数)が使えるので、相続遺産の計算に入れる金額は1500万円になります。

つまり、Aさんの遺産は、

現金・預金・株式:3000万円

土地(特例適用後):2600万円

建物:1200万円

生命保険:1500万円

となります。

これらを足し合わせると総遺産額は8300万円。ここから葬儀費用を差し引くと、正味の遺産総額は8000万円。基礎控除を引くと、結果として3200万円が相続税の課税対象となります。

ここから実際支払う相続税を計算すると、下記のようになります。

  • 妻:0円
  • 長男:80万円
  • 長女:80万円

長男・長女合わせて92万円お得に!

結果として生命保険を利用した場合、長男・長女が支払う相続税は合わせて92.5万円減りました。

生命保険, 相続税 (写真=Thinkstock/GettyImages)

また、生命保険であれば3000万円の保険金を現金で受け取れますが、全額預貯金の場合は、口座が凍結となり、通常は現金の引き出しが出来なくなります。

病院の精算、葬儀にかかる費用(例題では3百万円)などを別途手持ちの資金で準備しなければなりません。

このように生命保険を利用すれば相続税の節税だけではなく、整理資金の準備も出来るため遺族の方には大きなメリットになります

生命保険で相続税対策をしたときの失敗例

このようにメリットが多くあるようにみえる生命保険での相続税対策ですが、実は失敗例もあります。

〈生命保険の失敗例〉

妻に先立たれたBさんには子が2人(長男と長女)います。

Bさんは自分が亡くなった後、同居している長男にそのままこの土地建物を譲りたいと考えていいます。ところが、財産はこの土地建物(3000万円相当)しかありません。Bさんはこのままでは長女がかわいそうと思い、1500万円の生命保険に加入し、長女を死亡保険金受取人にしました。

さて、これで良かったでしょうか?

一見するとよさそうに思えます。ところがこのケースでは、長女が土地建物の「遺留分減殺請求」(法律で法定相続人に定められた最低限度の遺産の取り分を請求すること)をして、長男は3000万円の1/4の750万円を長女に支払わなければならなくなったのです。

このようなケースでは保険金の受け取りを長男にして、長男から長女へ現金(死亡保険金)を渡せるようにしておくことが必要でした。

生命保険で相続税対策をするときの3つの注意点

失敗例にあったように、生命保険なら何でも良いというわけではありません。保険の種類や加入の仕方を間違えると、全く相続対策にならないこともあるので注意が必要です。

ポイント①生命保険の種類に注意

「相続対策」を目的とするなら「終身保険」を選んでください。「定期保険」や「養老保険」は保障の期限があるので、期間終了後に死亡すると保険金が支払われないという可能性があるためです。

ただ終身保険とひとくちにいってもさまざまな種類があります。種類をみてみましょう。

  • 一時払い終身保険

まとまった資産を減らしたいときに活用するのには一時払いの終身保険が主流です。一般的に一時払い終身保険は健康状態の審査はあまり厳しくありません

  • 緩和型終身保険

最近では、持病のある方でも加入可能な緩和型の終身保険も増えています。保険料は割高になっていますが、加入の必要性を感じている人には有効な商品です。

  • 変額終身保険

運用によって将来受取れる金額が変わってくる保険です。

保険料の一部が特別勘定とよばれるファンドの中で株や債券を利用して運用され、その運用実績によって保険金や解約返戻金の金額が増減します。運用がうまくいかない場合でも死亡保険金は下がらないのが一般的です。

リスクがある分、保険料は割安で設定されているため相続対策には有効に活用できる商品です

ポイント②契約内容も重要

次に重要なのが契約内容です。「契約者」「被保険者」「保険金の受取人」が誰になっているかにより税金の種類が変わってきます。

生命保険, 相続税 (写真=Thinkstock/GettyImages)

「保険契約者=被保険者」、「保険金の受取人=相続人」としておくと、相続税を非課税として保険金を受け取れます。

ポイント③生命保険の加入時期にも注意

注意点として生命保険は、いつでも加入できるものではないということです。

例えば、健康上の問題があれば、保険金の削減など契約の引き受けに条件がついたり、最悪の場合は加入できないということもあります。更に、年齢が高くなると保険料も高くなります。

「そろそろ相続対策をしなくてはいけないな」という年齢になってから検討を始めると健康・保険料、両方の面で悩むケースが出てくるのです。保険を活用する場合、可能な限り早い段階で相続税対策を考えるのはとても重要なことです

念のため確認しておきたい相続税5つのポイント

ここまで主に生命保険についてお話してきましたが、最後に相続税の確認しておきたいポイントを紹介します。

①相続税の計算式を確認しよう

遺産総額を減らすのか、保険を活用して非課税枠を使うのかそれぞれにあった方法を考えます。

②相続人が誰なのか確認しよう

相続をする人数によって基礎控除の額が変わります

③相続財産は何があるのか確かめよう

財産の種類によって納税の準備が必要です

④誰が何を相続するのか決めておこう

お金に名前をつける準備、争続を防ぎます

⑤遺言を書こう

正式な遺言に抵抗がある方もエンディングノートの作成をお勧めします。プラスの財産ばかりでなくマイナスの財産についてもわかるようにしておくことが大切です

相続税対策に「完璧」はない

相続税対策には「完璧」というのはありません。生命保険の活用は相続税対策の中の一つです。実際に保険を活用するには、税理士やファイナンシャルプランナーなどプロのアドバイザーにご相談ください。

協力:栗山貴志さん(税理士法人フィールド 税理士、CFP)

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