(写真=Thinkstock/Getty Images)

なぜ増えない? 世界の女性管理職の現状

他国と比べ女性管理職比率が低い日本。それでは他国の現状は?

大学卒業後、新卒で企業に入社し7年目、上司からも信頼されて仕事を任せてもらえるようになり、部下も増えて指導する立場になってきた友人と話していた時のこと。キャリアプランについて「やっぱり将来的には昇進してひとつの部署をまとめたい、っていうイメージなの?」と聞いてみると、「うーん…」と渋い顔。

理由を聞いてみると、「上司に女性の管理職はほとんどいないから、可能性は低いと思う」との答え。彼女の勤める会社は規模も大きく、全国に支社を持つような企業ですが「もし管理職を打診されても、自分にできるかどうかイメージがつきにくいし、正直なところやりたいと思えるかどうかわからない」とも話していました。

今、日本の女性管理職は

ILO(国際労働機関)から発表された女性管理職比率ランキングによれば、日本は108位中の96位という低い結果が出ています。政府でも女性の活躍を後押しする動きが始動し、今年4月には女性活躍推進法が施行されましたが、女性の管理職や経営幹部の比率を増やすことは今後の企業の課題です。

2015年に太陽グラントソントン社が36カ国の中堅企業を対象に行った調査結果によれば、日本の中堅企業における「経営幹部の女性比率」は8%で、8年連続で最下位という結果になっています。経営幹部に一人も女性がいない中堅企業は66%と、調査国の中で最も高い結果となっています。

しかし、同データによれば、世界の経営幹部の女性比率の平均は24%で、地域別に見ると上昇している国もあるものの、全体的には停滞傾向にあることもわかっています。今回のデータは中堅企業を対象としたデータのため、全ての企業に当てはまるわけではありませんが、日本のみならず、世界の女性の働き方は、どのような状況にあるのでしょうか。

フィリピンで女性管理職が多い理由

ILOのランキングでは女性管理職比率が47.6%と世界4位、アジアでもダントツのトップを誇るフィリピンでは、男女の差別意識が少なく、企業などで多くの女性管理職が活躍しています。一方で、彼女たちの活躍の背景には、家事などを担当する「メイド」を各家庭で雇っていることが挙げられます。

働く女性が仕事と家庭の両立が難しくなる一因として、家事や子育てなどの負担が多くなりがちという点があります。フィリピンでは家庭にメイドがいることが一般的であり、メイドに家事全般を任せることで、結婚や妊娠・出産後もパフォーマンスを落とさず働くことができています。

日本はそのような文化がまだあまり普及しておらず、民間の家事代行サービスなども出てきてはいるものの、全体の割合としては少ない状況です。また、妻、夫、どちらか一方だけが家のことだけに専念するというスタイルを取りにくい家庭もあるでしょう。

日本の共働き家庭に外国人労働者を入れ、フィリピンのようなメイド文化を取り入れるという方法もありますが、「家のことは彼女たちにやらせればよい」という差別的な意識を生む可能性もあります。そうなれば本当の意味での女性活躍にはつながらず、矛盾が起きてしまうことになりかねません。

労働者の権利が強いフランスでは…

ヨーロッパでは労働者の権利が守られていることで有名で、ILOのランキングで女性管理職比率39.4%のフランスでは「出産後も仕事を続けるのが当たり前」という認識が根付いており、女性にとって働きやすい環境が整っているといえます。残業などがほとんどないうえに、男性も育児休暇を取得することが珍しくなく、休暇や家族手当なども充実しています。

理想的な環境のように思えますが、その一方で、管理職になると仕事量が多くなりがちで、一部の人にしわ寄せがいきやすいというデメリットがあります。そのため、フランスでは男女ともに「管理職になって仕事が忙しくなるのであれば昇進しなくてもいい」と考える人もいるそうです。また、労働意欲が低くなると、労働者のストライキなどが起きやすく、生活インフラが滞りやすいという可能性もあります。

女性管理職比率世界15位のアメリカの現状

女性管理職、海外 (写真=Thinkstock/Getty Images)

女性管理職比率が42.7%のアメリカでは、子どもを持って働く女性に対するサポートが不足していることが課題になっています。育児介護休業法により、出産時には12週間の休暇を取得することができ、出産後も育児休暇を取ることが可能ですが、育児休暇中も給与の一部を受け取ることができる日本の会社員とは異なり基本的に無給なため、出産後すぐに復職する女性も見られます。

保育所などもあるものの費用が高額な所も多く、共働きにも関わらず経済的に厳しくなりがちという問題点もあります。日本でも保育所不足などがたびたび問題になっていますが、保育所に入れるまでは大変でも、入所できれば何とか夫婦フルタイムの共働きも可能になる日本と比べて、アメリカの女性が仕事と家庭を両立させ、仕事で活躍し評価されるためには、お手伝いさんを雇ったり高額な保育所費用を支払える経済力があったり、子どもの面倒を見てくれる親が近くに住んでいることなどの条件が必要とされます。

女性管理職登用への道

今回ご紹介したほかにも、都心部を中心に女性の社会進出が進むインドでは、女性の管理職比率は高くなく、働く女性の妊娠・出産年齢が上がってきているなど、日本と共通した課題もあります。

日本の女性管理職比率が世界の中でも特に低いことは有名で、今後改善が必要な事項です。しかし、女性管理職比率が高く、一見働く女性が活躍しているように見える他の国でも、数字だけでは知ることのできない課題をそれぞれに抱えていることは確かなようです。大統領候補になっているクリントン前国務長官が「家庭と仕事の両立は無理」といい、話題になったこともありました。

課題は山積みだと思いますが、制度や周囲が変わらないと嘆いても仕方がありません。こうした世界のさまざまな事情を学んだ上で、今ある環境を認識し、活用できるものは最大限活用しながら、私たち世代が道を切り開いていくことが大切なのではないでしょうか。

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