(写真=Thinkstock/Getty Images)

【連載】「税理士の告白」

第1話 「金を出さない奴は役立たず!」母の暴言で我に返り、気づいた浪費グセの正体

化粧品に飲み代…ダメだとわかっていてもやめられないのはなぜ?

大学時代卒業後、ドン・キホーテに入社し、会計事務所を経て現在は税理士として働く鈴木まゆ子さん。子育てしながら独立している鈴木さんはある意味女性の「あこがれ」のような存在かもしれませんが、そこまでに至る道のりは苦難の連続でした。なぜ法学部からドン・キホーテへ入社し、会計事務所へ移ったのか? 現在も「お金」と心理について独自に研究を続ける税理士の鈴木さんに、浪費グセに苦しんだ過去を振り返ってもらいました。

子育てしながら税理士・ライターとして活動

現在、私は3人の女の子を育てながら、税理士として税務申告を行い、同時に、コンスタントにWEBやメルマガで税務・会計に関する記事を執筆しています。3歳と5歳の子の保育園の送り迎えや毎日の洗濯、8歳の子の学校生活を気にしながら仕事をこなすのは大変ですが、同じ自営業の夫が協力的でいてくれるおかげで、充実した毎日を過ごせています。育児の悩みから興味を深めた心理学を、もともと持っていた「お金」というテーマから独自に研究してもいます。

私がこうして税理士として充実した毎日を過ごすまでには、長い道のりがありました。そして、今も「お金」について独自に研究を続ける理由は、この長い長い道のりが深く関わっていると思います。

お金で苦労した大学時代

私は一浪して中央大学法学部に入学しました。しかし、その直後から大学受験の勉強を再開しています。中大は本命校ではなかったのです。この頃、唯一の家族である母が、私の認知をめぐって実父と係争中でした。同時に母は私の学費を実父に要求、その際の実父の条件が「東大に受かったら金を出してやる」というものでした。

実父の条件と母の期待を満たすべく、私は猛勉強しました。同時に、「お金を引き出せなかったら私には価値がないのだ」という虚しさを押し殺していました。

しかし結果は不合格。父の学費捻出の見込みがなくなり、母は落胆。母はそれ以後、裁判に関する事務的な用がない限りは、私に連絡をしてこなくなりました。時折、長い手紙を書き送ってきましたが、その内容も裁判のみ。私の健康や生活の心配の言葉は一切ありませんでした。

カフェ代、化粧品代…心の虚しさを埋めるために

「私は、母の欲求を叶えるための道具でしかない」という虚しさが日々募ります。これと並行して、単位不足で奨学金が止められ、母からも生活困窮を理由に仕送りがストップしてしまいました。アルバイトをするも、収入は生活費に消えました。郵便貯金残高が3000円になり、バイト代を前借したこともあります。

その後、奨学金が復活し、生活に余裕を取り戻しましたが、心の虚しさを埋めるための浪費は止まりませんでした。カフェ代、化粧品、飲み代…とにかく刺激で心の虚しさを埋めていました。「このままはまずい」、そう思いながらも衝動は止められませんでした。

寸暇を縫って浪費したドンキ時代

①税理士が語る、浪費グセの正体② (写真=Thinkstock/Getty Images)

大学を卒業し、ドン・キホーテに入社しました。この会社を選んだことについて、母に話したら反対されることが分かっていたので何も伝えませんでした。自分で自分の人生を選びたかったのです。もともと販売に興味があったので、「せっかくなら実力主義の会社でどこまでやれるか挑戦したい」という気持ちがこの入社を後押ししました。

しかし現実は甘くありません。朝の8時半に始まり夜の10時過ぎに終業、最悪午前様になってしまう毎日にかなりストレスを感じました。いつまでも終わらない仕事、がんばっても認められない自分…。

襲ってきた心の虚しさから、私は再び浪費するようになりました。食事は常に外食か中食、休日は消費でストレスを発散。手取り20万円は当時新入社員としては高額なお給料でしたが、毎月残高を残すことなくキレイに使い切っていました。「忙しいから使う暇なんてないよ」と入社前に言われていましたが、寸暇を縫って浪費していました。それほど、私の心の穴は大きかったのです。

「悪いけど、10万円貸して」

そんなある日、事件が起こります。母が、住宅ローン返済ができなくなり破産したのです。さらに半年後、交通事故で母が物損の加害者となり、相手から賠償請求をされました。車の保険に入っていなかった母は、私にお金の無心をしました。「悪いけど、10万円、とりあえず貸して」。一旦はOKしたものの、なんとなく腑に落ちません。当時一緒に暮らしていた婚約者(現在の夫)に相談したところ、厳しい忠告を受けました。

「絶対に貸すな。一度貸したら、必ず二度目三度目が来る。金の貸し借りは親子関係をも壊す。だから貸すな」

大事な母を助けたい気持ちが強い私でしたが、彼の意見も筋が通っていて納得しました。お金を貸せない旨を母に電話で伝えたところ、「金を出さない奴は役立たずだ!用はない!」と受話器を置かれてしまいました。以後、1年近く、音沙汰がありませんでした。

この母の暴言は、母思いだった当時の私には、かなりショックでした。最初は泣いていましたが、次第に冷静になり、同時に真実が私の目に明らかになってきました。

衝動に身を任せてはいけない

母は、私と同じ浪費グセを持っていたのです。そして心の虚しさをも持っていました。虚しさを埋めるべく、大して必要でもないモノを通販で買いあつめ、結果、貯金はゼロになり、ローン返済が息詰まるほどになったのです。虚しさが、母の金銭感覚を狂わせ、実父や私に無心するようになり、最後、破産や賠償にまで追い込まれ、すべてを失うことになったのでした。

「衝動に身を任せていてはいけない。自分を守るためにも、貯金しよう。いざというとき、手持ち金が0円か10万円かでは心理的な安心感が大きく異なる」。このことに気づき、私は自分の金銭感覚の修正にすぐに取り掛かりました。

ドンキを辞め、会計事務所に入所した私は、まず10万円を目指して貯金をしました。10万円をクリアしたら次は20万円。こうして自ら自分の安心安全を作りだし、経済的のみならず心理的にも安定して暮らせる土台を整えたのでした。

振り返って今思うこと

母の事件をきっかけに、私は貯金の習慣を身につけました。その後、税理士試験の勉強に専念するに伴い、仕事を辞め、一時貯金を使い果たしてしまいます。しかし、一度身につけた習慣を思い出し、長女が1歳のときに貯金を再開。現在は、仮に失業しても、半年から1年はどうにか生活はしのげる程度の貯金を保持しています。

大学時代や新入社員時代の浪費は、思い返すにつけ、「なんてもったいない」と言ってしまいます。しかし、同時に、それほど心の闇が深かったことを実感、心の状況が金銭感覚を狂わせ、最終的には人の一生をもおかしくしてしまうという事実にため息をつくのです。

お金に執着すると本当の豊かさから遠ざかる

お金は、実際には、色々ある「豊かさ」のひとつでしかありません。人脈も、時間も、そして何かに挑戦する時の人間のエネルギーも、すべてお金と同じ「豊かさ」です。けれど人間は、他のどれよりもお金に執着してしまいます。もっとも汎用性が高く、様々な可能性を一番力強く秘めたものがお金だからです。それゆえに、人はお金に欲望を重ね合わせ、お金に振り回され、場合によっては身を滅ぼしていきます。

お金に執着することで、人は本当の「豊かさ」から遠ざかっていくのです。上手にお金を使いこなすには、まず、使う際の意識を冷静にしておくこと、そしてその冷静さを保つためには使う側自身の心の状態が安定していることが欠かせません。

浪費をせずにはいられなかったあの頃の自分が、もし目の前にいたら、私は次のように声を掛けることでしょう。

「あなた、本当に欲しいのはお金でもモノでもないよね。本当に幸せになりたいのなら、まずはその心の声を聴き、そして心の状態を整えよう」

【人生を謳歌したい人必見!誰でもできるマネーハックはこちら】
▽お金を知る
(PR)婚活よりも「マネ活」ブーム!? 知らないうちに「賢いモテ女」になる新習慣とは
あなたは「貧乏脳」それとも「金持ち脳」? 読めば勇気が湧く一冊を紹介
目指せリッチウーマン! 今すぐ真似すべき富裕層の共通点3つ
▽お金を貯める
その貯金方法間違ってない?! 正しい貯金の仕方・お金の増やし方を解説
FPおすすめ「貯金が成功する4つのコツ」これで1000万円貯めよう
▽お金を増やす
働く女性に。3つの「ほったらかし資産運用」
資産運用に使える保険とは?保険で資産運用をするときのポイント
女性が株を始めようと思うきっかけって?
▽お金を守る
優遇制度をフル活用! 節税でお金持ちになるすごい方法とは
30代独身。保険を見直したほうがいい?
親が元気なうちに話し合っておけば…リアル「争続」事例集

この記事をシェアする

個性的な連載で「投資」を身近に