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【連載】「わたしがFPになった理由」

第1話 突然の事故で夫が急死して…勉強嫌いの女性に杼木さんが伝えたいこと

突然の事故で夫を亡くしたFP杼木さんの体験談です。

ファイナンシャル・プランナーの杼木美絵(とちぎ・みえ)さんは30歳を目前にマイホームに移り住み、子育てに奮闘する日々を送っていました。しかしある日、夫が交通事故で急死します。壮絶な経験を通じて「お金の知識」の大切さを知った杼木さん。「勉強を避けたがる女性」にいま伝えたいこととは?

着付けの先生になりたかった

10年前、わたしは30歳を目前に夢のマイホームに移り住み、初めての子育てに奮闘する毎日を送っていました。他県に嫁いだこともあり、仕事も結婚を機に辞めてしまっていたので、出産まではパートで輸入食器を販売したり、オペレーターの仕事をしたりしていました。

ローンを組んでマイホームを購入したことで、子どもが成長してからのことも漠然とですが考えるようになりました。主人とも話し合い、子どもの手が離れたら、結婚前に取った着付けの資格を活かして仕事をしたいと考えるようになっていました。

転機はある日突然に

「朝起きて、主人を見送り、子どもにご飯を食べさせて、家事を済ませたらお昼まで近くの公園で子どもを遊ばせる」

「お昼になったら、家に帰って子供にご飯を食べさせて昼寝させ、その間に夕飯の支度をする」

「昼寝から起きたら、夕方までまた公園へいって遊ばせる」

「その後、帰宅してお風呂にいれて、ご飯を食べさせて寝かしつける」

「主人が帰ってくる。主人にご飯の用意をする」

2005年9月のその日まで、わたしの毎日はこの繰り返しでした。

そして、ある日突然、日々そう変わらない毎日を過ごしていたわたしの身に、思いもよらない出来事が起こります。その日、わたしは子どもを寝かしつけながら一緒に寝てしまっていました。電話が鳴る音で目が覚め、電話に出ると、相手は義父でした。

それは、会社帰りに主人が交通事故に遭ったという知らせでした。「大丈夫なんですよね」というわたしの問いに、義父からは「大丈夫じゃないんだ」という答えが返ってきました。その言葉通り、主人は事故から2日後、息を引き取りました。

通夜、葬儀を済ませると、死後の手続きが容赦なく、押し寄せてきました。児童手当、生命保険、住宅ローン、健康保険、年金……主人の通帳も凍結されてしまい、光熱費の引き落としができないという通知もあちこちから届きます。子どもを預けて、役所に行っても、またすぐに行かなければならない手続きがあり、最初のうちは言われるがままに手続きをすすめていました。

年金の窓口で…

ある日、年金の窓口で手続きをしていた時に、「保険料の支払いを全額または4分の3、半額、4分の1のいずれか分、免除できますよ」と言われました。そして「支払わなくてもいいのならそのほうがいいだろう」と全額免除してもらうことにしました。

【第1話】勉強嫌いの女性にFPが伝えたいこと(追) (写真=Thinkstock/Getty Images)

ところが実は、保険料を全額免除した場合、年金額は保険料を全額納めたときに比べて、2分の1(平成21年3月までの免除期間は3分の1)となるのです。わたしはこのことを知り、免除してもらった保険料をあとから全額納めることにしました。しかし当時のわたしは免除するとどんな影響があるのか、また、そのことをどのように質問していいのかも分からなかったのです。

夫が加入していた保険の種類分からず

生命保険、医療保険の請求手続きでも苦労しました。保険の見直しも早くしなければ!と思っていたものの、手がつけられていなかったので、主人が一体どんな保険に入っていたのか、最初はよく分かりませんでした。医療保険に少額の死亡保障がついていたのを知人が指摘してくれ、すべて請求が終わってから再度見直して、請求漏れに気づきました。

知識のないまま、死後の手続きを進める中で、悔しい思いもしました。無知であるがゆえの悔しさ、怒り。当然、保険にしても、年金にしてもお金がかかわる話なのに、どうしたら自分にとって有利なのか判断することができません。そして、自分のためになる情報というのは、誰も教えてくれないんだと実感したわたしは、FPの勉強をはじめました。

最初は、子どもが寝ている間に通信教育で勉強をはじめ、AFP資格を取得しました。その後、さらに難易度の高いCFP資格を取得しました。自身の経験からお金の知識だけでなく法律知識も身につけたいと、行政書士の資格も取得しました。主人が亡くなって9年目の2014年、開業に至りました。

女性は勉強を避けたがる

FPといえば、教育費・老後生活費、保険見直し、住宅購入の相談が主流ですが、最近の個別相談で多いのは、投資など資産運用についての相談です。政策の後押しもあって初心者でも投資にチャレンジし易い環境が整いつつあることに加え、メディアの影響が大きいと感じています。

中でも女性はメディアの影響を受けやすいと感じています。「NISA」や「確定拠出年金」といったキーワードに敏感に反応し、興味を持つものの、知識を得るために自分で勉強することは、避けたいようです。

専門家に聞いても「身になる知識」は得られない

【第1話】勉強嫌いの女性にFPが伝えたいこと② (写真=Thinkstock/Getty Images)

専門家に聞くことで、どんな疑問もある程度は解決できるかも知れませんが、「身になる知識」というのは、やはり自分で勉強し、実際にその知識を使うことでしか得ることはできないと、自身の体験から痛感しています。

また、お金の知識は社会保障制度の理解と連動しています。社会保障制度を理解すれば、保険の掛け過ぎを防ぐこともでき、老後の生活費の試算もできます。投資でお金を増やすこともこれからの時代は大切ですが、まずは、社会保障制度をしっかり理解して、いざという時に自身と家族を守れる知識を身につけておきたいものです。

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